この記事の要約
☞廃棄物は、業者が回収したら終わりという訳ではない
☞契約書・許可証・マニフェストの管理は、事業所にあった適切な運用方法がある
☞正しく運用しないと厳しい罰則規定がある
<この記事の対象者>
廃棄物を出す全ての事業者(法人・個人事業主問わず)
無事に廃棄物業者と委託契約を締結し、回収がスタートされた事業者向けのガイドとなります。
業者の見積もりに納得し、回収曜日や時間帯のルールを決めて、ごみの定期回収が無事開始・・・
「後はお金を払っていれば、業者が全部やってくれる」と勘違いしていないでしょうか。
いいえ、違います。
業者に委託しているのは、基本的にはごみの回収と適正処理のみです。
やったほうが良い、ではなく『やらなければ法律違反に問われる』大事な廃棄物管理についてまとめました。
業者を決めた後の廃棄物管理
業者を決めた後のやらなければいけない廃棄物管理について、日の単位・月の単位・年の単位ごとにまとめたのが下記表になります。
各タイトルをクリックすると、詳しい説明に飛びます。
日々やること | 1 紙マニフェストの管理 |
月ごとでやること | 4 月間排出量の確認 |
年ごとでやること | 5 契約書の期限等確認 |
廃棄物の量や種類によって交付されるマニフェスト枚数は変わってきます。
マニフェストの交付枚数によっては、日ごとでは頻繁すぎる事もありますので、そういう場合は週ごとなどに読み替えて下さい。
1 紙マニフェストの管理 – 日次
紙マニフェスト(産業廃棄物管理票)は5年間保管する義務があります。
A票と業者から返却されるB2・D・E票の4部を揃えてファイリングしましょう。(積替保管用や独自規格のものは、4部でない場合があるので注意)
下記のようなファイルをあらかじめ購入し、発行年度(4月~3月末で1年単位)・廃棄可能な年度(5年後)を書いて運用しましょう。
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枚数が多い場合は、途中での差し替えが簡単なリングファイルの利用がおすすめです。
マニフェストは紛失しても原則再交付は出来ません。もし紛失してしまった場合は、業者が保管している控えの写しを取り寄せて、紛失したマニフェスト控えの代替にする必要があります。業者にも負担が掛かりますので、出来る限り紛失は避けたいところです。
重要なのでもう一度。
マニフェスト伝票は処理の終了後も5年間保管が必要です。しっかり保管できる体制を整えましょう。
ちなみに、電子マニフェストにすると保管義務は無くなります。
紙マニフェストの詳しい運用方法については、下記記事も参照下さい。
2 電子マニフェストの管理 – 日次
JWNETに加入していれば、インターネット上にてマニフェストの交付が可能です。
業者も郵送で返却する必要がなくなり、紛失事故が防止できます。
電子マニフェストの運用も登録(交付)したら終わりではなく、その後も業者が確実に報告をあげているか定期的にチェックすることが必要です。
詳しい運用方法については、こちらを参照下さい。
またリサイクルハブでは、電子マニフェストの運用支援サービスを行っています。
→罰則
マニフェスト交付義務違反(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(マニフェストを交付していない)
マニフェスト交付義務違反(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(法定記載事項が漏れたマニフェストを交付)
3 発行したマニフェストの集計 – 日次
後述する「交付等状況報告書の作成と提出」の対策として、どのようなマニフェストを交付したか記録しておきます。
排出する廃棄物の種類や量によって、日々おこなうか月単位で行うかは異なりますが、マニフェストを交付した時点で対応するのが一番望ましいタイミングです。
4 月間排出量の確認 – 月次
業者から届いた請求書の数量が正しいか確認を行います。
産廃であれば、発行したマニフェストと照合しましょう。
一般廃棄物は、日々出している数量と差が大きくないか確認します。排出するたびに「2袋だした」「およそ5kg」など記録しておくと、照合確認が容易になります。
5 契約書の期限等確認 – 年次
契約書は、契約終了後から5年保管が必要です。継続契約している限りは、破棄することはできません。
業者変更を行ったり、事業所を閉鎖して廃棄物がでなくなったとしても、その後に契約が終了してから5年間となる事に注意して下さい。
特に単価や住所などが変わらない限り、そのままにされるケースが多いでしょう。
しかし、廃棄物処理法の改正が行われた時に法定記載事項が変更・追加されることがあります。
自動更新を含め、次期の契約更新を迎えてそのままにしていれば、必須事項が漏れている欠陥の契約書になってしまいます。
その為法改正を見落とさず、問題がない内容を維持する必要があります。
また、契約書を無くさず大切に保管できるよう専用のファイルを用意することをおすすめします。
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複数業者との契約を行っている場合や、年数経過によって再締結した契約書・覚書・許可証が増えた場合は、インデックスなど使って整理しましょう。
こちらの記事もご参照下さい。
→産廃処理の委託契約書のメンテナンス方法
→罰則
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれの併科(5年間の保管を怠った場合)
6 許可証写しの期限確認/取寄せ – 年次
委託契約書に必要な許可の写しは、契約書に添付しなければいけないと義務付けられています。
収集運搬の委託であれば、収集運搬の許可証が必要です。(他の許可証が必要になるケースもあります)
処分又は再生に係る委託契約書は、委託する内容によって必要な許可の写しが必要になります。(処分業許可証の他には、再生利用に係る環境大臣の認定証や広域的処理に係る環境大臣の認定証の写し等もあります)
その許可証に有効期限がある場合は、許可期限が切れていないものを添付しなければいけません。
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれの併科(許可証の添付が無い)
5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金。又はこれを併科。(無許可業者へ委託していたら)
7 交付等状況報告書の作成と提出 – 年次
平成20年度から始まった制度で、紙マニフェストを交付した事業者は、事業場ごとに前年度1年間の交付等の状況(産業廃棄物の種類及び排出量、マニフェストの交付枚数等)について、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事又は政令市長への報告が必要です。
例えば東京都大田区にて工場を経営している場合、4月1日~翌3月31日の1年間に交付したマニフェストを下記のように作成し、東京都に提出します。
出典:東京都
見ていただくと分かりますが、同じ廃棄物の品目でも異なる処理方法を取っている場合は、別集計を行います。廃プラスチック類は、収集運搬を異なる2社に委託している為、行を分ける必要があります。
また東京都で1工場、埼玉県で1工場経営している場合などは、それぞれの行政に提出が必要です。大型チェーン店や日本各地に支店や工場がある場合などは、この報告書を作成するのに大変な時間を要する可能性があります。
参考:産業廃棄物管理票交付等状況報告書の概要(東京都)
8 現地確認 – 年次
産業廃棄物の収集運搬・処分を委託しようとする場合は、委託先業者が廃棄物を処理する能力を備えていることの確認が必要です。
その後、委託先業者の処理状況を毎年確認する必要があります。
現地確認は、廃棄物処理法にて努力義務と定められており、条例で義務化されている自治体もあります。
またリサイクルハブでは、廃棄物管理アセスメントの運用支援サービスを行っています。
廃棄物管理のまとめ
最低限やらなければいけない廃棄物管理に関して簡単にまとめてみましたが、貴社では対応できていますか?
廃棄物処理法は、やらなければいけない事・重い罰則が多く盛り込まれています。
今回のコラムは個人事業から中規模の企業を対象に書いたものですが、大規模になってくると「一般廃棄物のマニフェスト運用」「多量排出事業者の処理計画および実施状況報告」「食品廃棄物等多量発生事業者の定期報告」などが必要になる場合があります。さらに廃棄物管理の業務が増えていきます。
実際には、普段の業務を行いながら、かつ廃棄物管理を行うのはとても大変ですよね。
リサイクルハブならワンストップで業者選定から日々の廃棄物管理までご支援することが可能です。
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